過度な長時間労働、サービス残業、パワハラ・・・
様々な理由によって「ブラック」と言われてしまう企業が存在します。
これは正社員だけでなくアルバイトでも起こることだったりします。
今回は、数年前にブラックバイトなのではないかと話題にもなった「塾講師」に焦点をあてて、ブラックになりやすい理由と、その対策をお伝えしたいと思います。
ちなみに、私自身は塾講師をしていましたし、教室長として教室運営もしていました。
現場のリアルのようなものも混ぜながら解説していきます。
<注意>
しっかりと経営してアルバイト学生を雇っている塾もあるでしょうし、塾講師のアルバイト全てを否定するものではありません。
今回の記事はブラックバイトになりやすい一般的な理由を述べているものですので、すでに何か問題があるという場合は、記事内にある退職代行や弁護士などに相談するようにしてください。
⒈ ブラックバイトになりやすい理由
まずは、塾講師がブラックバイトになりやすい理由から説明します。
大きな理由としては次の2つです。
① 「コマ給」である
② 半強制のシフト
塾講師と書いてきましたが、ブラックバイトになりやすいのは「個別指導塾の講師」です。
最近では個別指導塾のニーズが高まっていて、住宅街を歩けば数件の個別指導塾が見つかるくらい、身近なものとなっています。
十数年前まで主流だった大人数の前で講義をするようなものではなく、1人の先生が2人ほどの生徒に指導するのが個別指導塾です。
以後、簡単に塾講師としますが、基本的には個別指導塾の講師のことだと考えてください。
① 独特の給与計算、「コマ給」
普通のアルバイトの場合、給与の計算では「時給」(あるいは「日給」)となっているはずです。
「1時間働いたら1000円」
これが時給です。
最低賃金法でも時給で計算されているので、基本的には時給を使った方が働く側も使用する側も計算が楽だったりします。
ところが、「コマ」という独自の時間単位のある塾の場合、時給で計算すると複雑になってしまいます。
多くの塾の場合、「1コマ=80分」などのように、1時間ではない単位で時間割を組んでいます。
1コマだけ教えに来る先生も多いので、時給で計算しようとすると、どうしても切りの悪い数字になってしまいます。
そこで、1コマの給与が1500円、というような「コマ給」があるのでしょう。
このコマ給が「ブラックバイト」と言われる最大の理由となっています。
まず、「コマ給」は、授業以外の時間に給料が発生しないことを意味しています。
授業が始まる直前に先生が来るというのは、生徒側からしたら嫌に思うものです。
そこで、ある程度時間に余裕を持たせて教室に来るように指示されることが多かったりします。
「15分前までには来るように」
このように指示されたとしても、その15分の給料は出ません。
そして、「指導報告書の記入」があります。
この作業は意外と時間がかかり、最初のうちは指導終了後30分くらいかかる先生もいます。
当然そのような時間もコマ給ではないので給料が出ません。
このような一切給料のでない「拘束時間」も含めて計算すると、最低賃金法で定められている最低賃金を割り込む可能性が出てくるのです。
最低時給が1013円である東京都で、1コマ(80分)1600円の塾講師をしたとしましょう。
その日は2コマあって、コマとコマの間の時間は10分です。
15分前には教室に来て準備し、指導終了後は指導報告書への記入と簡単な掃除を25分ほどしました。
拘束時間は「15分+80分+10分+80分+25分」となり、210分です。
その日の給料は2コマ分の3200円。
これを時給換算すると・・・
なんと914円になってしまうのです。
このように、コマ給という制度によって、最低賃金法を下回りやすい環境になってしまっているのです。
ちなみに、先ほどの事例の場合、コマ給が1780円以上で最低時給の条件がクリアとなります。
② 半強制のシフト
塾講師は基本的にシフト制です。
ただ、これにはちょっとした制限があったりします。
基本的に1年度間(4月〜翌3月)は辞めることが難しいです。
これは生徒側の立場になると分かりやすいかもしれません。
学年の途中でコロコロ担当の先生が変わってしまうとやりにくいですし、教室に不信感を抱いてしまう可能性もあります。
そして、テスト前や夏季講習などの場合、先生の都合よりも生徒の都合を優先するように言われることが多いです。
実は、個別指導塾の業界では講師不足が深刻となっています。
先生を増やそうと思ってもなかなか面接にすら来てもらえない状況なのです。
その先生のギリギリの人数で回そうと考えたときに、経営者目線でいくと、先生の都合を聞いていられないという実情があったりします。
シフト変更したくてもできない、辞めたくても辞められない・・・
そんな縛りが塾講師にはあるのです。
塾講師は大学生が多いですので、大学の試験前に休めなかったりして単位を落としてしまう、などという本末転倒な結果になってしまうリスクがあるわけです。
⒉ 対策
このようなブラックバイトになっている教室を避けるためにはどうしたらいいのでしょうか。
また、今すでに働いていてやめられない場合はどうしたらいいのでしょうか。
対策について考えてみることにします。
① ブラックバイトになる可能性のある教室を避けるために
一度契約してしまうとなかなかやめられないという実情があるのが塾講師です。
そのため、契約の前の段階で見極める力を養う必要があります。
これは単純な話で、「しっかりと契約内容を確認すること」が重要です。
時給換算したときに最低賃金を下回らないか、変な条件が付けられていないか、などをチェックした上で契約書にサインしましょう。
わからない部分があったら面接時に質問することも忘れずに!
特に、コマ以外の拘束時間についてはよく確認しておいた方がいいです。
② 辞めたい場合は
辞めたくても辞められない状況にある塾講師の場合、まずは相談するところから始めてみましょう。
まずは教室長と話し合ってみましょう。
その上で引き止められたり脅されたりした場合には、第三者機関を使うようにします。
「労働組合退職代行ガーディアン」という労働組合に相談するのも手です。
一連の退職手続きをしっかりと代行してくれるので、教室側との話がこじれてしまった場合でも辞められる可能性が高くなります。
訴えられるリスクがある場合には弁護士に相談する方がいいのですが、相談費用の面で考えたときに、アルバイトであれば労働組合に頼った方が無難であるような気がします。
【退職代行ガーディアン】
⒊ 最低限の法律知識をつけよう!
ブラックバイトかどうかを判断する上で欠かせないのが「法律知識」だったりします。
大学生の場合、その法律知識が乏しかったりするのも現実です。
これは塾講師に限らず、大学生全般に言えることです。
最低賃金、労働時間、有給休暇といった、働く上での最低限の法律知識をつけておくようにしましょう。
書籍でもたくさん販売されていますし、ネットでもすぐに情報が見つかります。
自己防衛のような感覚で学ぶといいかもしれません。
ブラックかどうかを大雑把にでも判断できるようにしておかないと、自分が被害者であることすらも認識できなくなってしまいますので、アルバイトをすると決めたら、面倒くさがらずに法律知識をつけるようにしましょう。